これは、拙著「メネンデスブラザーズ事件」から削除したボツ原稿です。

被告の友人だったグレン・スティーブンスは、警察のトップレスバー接待を受けて検察側の証人になった人物です。
それは面白いのですが、証言の内容は今となってはどうでもいいことばかりなので、本に掲載するのはやめたのです。グレン本人の経歴詐称とか、友達のロレックスを質屋に流した話とか…グレンがクズだってことしか証言していないので。

とはいえ、今もよく話題になる人ではあります。クズっぷりが面白すぎて。

 

以下ボツ原稿
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グレン・スティーブンスは、プリンストン大時代のライルの同窓生で、ライルがビジネスを始めた時には、右腕として働いた人物である。

彼は、ライルが遺言状のことでカリフォルニアに飛んだのを覚えていた。その時ライルは「父が書いたはずの新しい遺言状がコンピューターに保存されているか確かめるために専門家を雇った」と話していたと言う。さらに逮捕前の春、ライルともうひとりの学友兼ビジネスパートナーだったヘイデンの3人でロスへ向かう機内で、ライルが自分のレストランに電話をかけ、席に戻ると「警察が店に来た」と言って動揺した様子だったと証言した。この話はライルも認めている通りである。ライルは、グレンとヘイデンに弁護士チャレフの名刺と2000ドルを渡し、「何かあったらこの弁護士に連絡してくれ」と依頼した。具体的に何が起こるのかは言わなかったが、「オジールのテープが警察の手に渡ったら終わりだ」という意味のことを言っていた。

 

グレンもドノヴァンと同じように「ライルはそれほど金を持っていなかった」と証言する。反対尋問では「ライルがクレジットカードを使っているのを見た覚えはない」と言うが、学生寮でふたりが共同で飼っていた犬はライルがクレジットカードで買ったもので、購入時にはグレンも一緒にいたことが判明し、早々に嘘が剥がれた。またある時は、グレンが欲しがっていたが高額で手の出なかった125ドルのベルトをサプライズでプレゼントされていた。大学時代のライルがモバードの腕時計を愛用していたことや、時計を紛失してすぐに新しいものを買ったことは「忘れた」そうだ。

 

グレンは、弁護側からの聞き取り調査の要請はすべて断る一方、ゾーラー刑事とは何度も会っていて、ロサンジェルスではトップレスバーの接待を複数回受けていた。ゾーラーとの間には一種の友情が芽生えたとも言っている。

 

トップレスバー接待が暴露された後も反対尋問は続く。

ライルがアルファロメオを気に入らないと言っていたとも証言したが、反対尋問でロメオにはエンジントラブルがあったと答えた。

ライルは、事件後にロレックスを2本買っている。そのうちの1本をグレンに貸していた。ライルの使っていないほうをグレンが使っていたのだ。「そうすれば失くさないから」とライルが言ったからだった。グレンは、最初に借りたのは1990年3月頃のことだと言うが、追及されると「それ以前から借りていたかもしれないが、思い出せない」と証言を変える。とにかく、ライルが逮捕された時にロレックスはグレンの手元にあったことになる。でも、今はどこにあるのか分からない。グレンは、実家の隣の宝石商にその時計を売っていた。カリフォルニアに向かう機内でライルがグレンに託した2000ドルは、帰りの飛行機代に充てられた。また、彼はライルの従業員とし社用アパートメントに暮らしていたが、家賃は払っていない。後で支払うつもりだったそうだ。

 

続いて経歴詐称を暴かれる。彼がライルの下でしていた仕事はレストランの会計担当であり、この時には1軒の店舗に5人前後を雇用しているだけだったが、履歴書には、「20人を雇用し、年間100万ドルのビジネスを運営した経験あり」と書いていた。それだけでなく、「高校を首席で卒業」や「複数の成績優秀賞受賞」なども記載していた。グレンが「本当だ」と言い張ると弁護側は彼の卒業アルバムを開いて見せ、それらが嘘と認めさせた。過去に勤務した企業での給与は水増しされており、別の会社で40名以上をスーパーバイズしたという経歴も捏造だった。グレンによるとこれは、「当時のガールフレンドが書いた履歴書」であり「プリンストン大での指導に沿った履歴書作成法」なのだそうだ。

さらにグレンは、レストランのレジから金を盗んでいたことも認めた。ライル逮捕後、帳簿上の売り上げが激減した事象には「気づかなかった」で押し通した。

証言の後グレンは、勤めていた投資会社を解雇された。